運動方程式
運動方程式
力が加わる方向に 加速 するという単純な方程式
〔N〕質量
〔kg〕加速度
〔m/s²〕
運動方程式を立てる川柳物体に 力を描いて あとは軸わけ
- 物体に力を描く:重力 \(mg\),垂直抗力 \(N\),引く力・押す力,摩擦力 など。
- 軸を決める:加速度の向きを \(x\) 軸,それに垂直な向きを \(y\) 軸にとる。斜めの力は2つの軸の向きに分解する。
- 軸わけ:動かない向き(\(y\))は「力のつりあい(\(=0\))」,加速する向き(\(x\))は「\(ma = \)(力の合計)」。
動摩擦力…摩擦がある面を物体がこすれて動いているときは「動摩擦力」がはたらく。向きは動く向きと逆向き。
\(f_{\text{動}}\):動摩擦力 \(\mu'\):動摩擦係数 \(N\):垂直抗力
- 等速で動いているとき \(f_{\text{動}} = F\)
- 加速しているとき \(f_{\text{動}} < F\)
運動方程式の利用
求める
求める
求める
求める
運動方程式で加速度を求め,それを時間 \(t\) で積分すると速度,さらに積分すると位置がわかる。積分定数は \(t=0\) のときの値(初期条件)から決める。
例題①
質量 \(m\) の物体Aが面から受ける垂直抗力と加速度の大きさを求めよ。ただし,重力加速度の大きさを \(g\) とし,あらい面と物体Aとの動摩擦係数を \(\mu'\) とする。また,物体Aが移動する向きは で示した。
(1) なめらかな面の上を 力 \(F\) で水平に押す。
解説
物体Aにはたらく力は,押す力 \(F\)(右向き),重力 \(mg\)(下向き),垂直抗力 \(N\)(上向き)の3つ。加速する向き(右)を \(x\) 軸,上向きを \(y\) 軸にとって軸わけする。
(2) なめらかな面の上を 力 \(F_1\) と力 \(F_2\) で水平に引く。
解説
右向き(加速する向き)を正とするので,右向きの \(F_1\) は +,左向きの \(F_2\) は − で式に入れる。
(3) なめらかな面の上を 力 \(F\) で \(\theta\) の角度に斜めに引く。
解説
斜めの力 \(F\) は,\(x\) 軸方向(水平)の \(F\cos\theta\) と \(y\) 軸方向(鉛直)の \(F\sin\theta\) に分解してから軸わけする。
ポイント \(F\) の上向きの成分 \(F\sin\theta\) が物体を持ち上げる分だけ,垂直抗力は \(mg\) より小さくなる。
(4) あらい面の上を 力 \(F\) で水平に引く。
解説
あらい面なので,動く向きと逆向き(左向き)に動摩擦力 \(\mu' N\) がはたらく。
(5) あらい面の上を 力 \(F\) で \(\theta\) の角度に斜めに引く。
解説
(3) と (4) の組み合わせ。\(F\) を分解し,動摩擦力 \(\mu' N\) を左向きに描く。
\(x\) の式に \(N = mg - F\sin\theta\) を代入すると
注意 動摩擦力は \(\mu' mg\) ではなく \(\mu' N\)。斜めに引くと \(N\) が小さくなるので,摩擦力も小さくなる。
例題②
時刻 \(t = 0\)〔s〕のとき,教室の天井から質量 \(m\)〔kg〕の物体を初速度 0 で落下させた。ただし,鉛直下向きを正とし天井の位置を 0 m とする。また,重力加速度の大きさを \(g\)〔m/s²〕とする。
- 物体の加速度を \(a\)〔m/s²〕とし,運動方程式を立てよ。
- 時刻 \(t\)〔s〕における物体の速度 \(v\)〔m/s〕を \(g\),\(t\) を用いて表せ。
- 時刻 \(t\)〔s〕における物体の位置 \(y\)〔m〕を \(g\),\(t\) を用いて表せ。
- 物体が床に達するまでの時刻は何 s か測れ。
以下の問いは \(g = 9.8\)〔m/s²〕として答えよ。
- 物体が床に達したときの速度は何 m/s か。
- 教室の天井から床までの距離は何 m か。
解説
(1)運動方程式
物体にはたらく力は重力 \(mg\) だけ(鉛直下向き=正の向き)。よって運動方程式は
両辺を \(m\) で割ると \(a = g\)。質量に関係なく,落下の加速度は \(g\) になる。
(2)速度 \(v\)
速度 \(v\) は,加速度 \(a\) を時間 \(t\) で積分すると求まる(「運動方程式の利用」の流れ)。(1) より \(a = g\)(一定)なので,
積分定数 \(C_1\) は,\(t = 0\) のときの速度(初速度)から決める。静かに落としたので \(t = 0\) で \(v = 0\)。代入すると \(0 = g\times 0 + C_1\) より \(C_1 = 0\)。よって \(v = gt\)。
(3)位置 \(y\)
位置 \(y\) は,(2) で求めた速度 \(v = gt\) をさらに \(t\) で積分すると求まる。
積分定数 \(C_2\) は,\(t = 0\) のときの位置から決める。天井が 0 m なので \(t = 0\) で \(y = 0\)。よって \(C_2 = 0\),\(y = \dfrac{1}{2}gt^2\)。
(4)〜(6)測定値を使って計算
(5) は (2) の式に,(6) は (3) の式に,(4) で測った時刻 \(t\) を代入する(\(g = 9.8\))。
下に測定値を入れると計算できます。
例題③
角度 \(\theta\) のなめらかな斜面に沿って上向きを \(x\) 軸とする。図のように,時刻 \(t = 0\) のときに,原点Oから \(x\) 軸の正の向きに初速度 \(v_0\) で質量 \(m\) の物体を打ち出した。重力加速度の大きさを \(g\) とする。
- 物体の加速度 \(a\) を \(g\),\(\theta\) を用いて表せ。
- 時刻 \(t\) における物体の速度 \(v\) を \(v_0\),\(g\),\(t\),\(\theta\) を用いて表せ。
- 時刻 \(t\) における物体の \(x\) 座標を \(v_0\),\(g\),\(t\),\(\theta\) を用いて表せ。
- 物体が斜面を上って,折り返すときの時刻 \(T\) を \(v_0\),\(g\),\(\theta\) を用いて表せ。
- 物体が斜面の折り返し点での \(x\) 座標を \(v_0\),\(g\),\(\theta\) を用いて表せ。
- 物体が再び原点に戻ってくるときの時刻 \(T'\) を \(v_0\),\(g\),\(\theta\) を用いて表せ。
解説
(1)加速度 \(a\)
物体にはたらく力は重力 \(mg\) と垂直抗力 \(N\)。重力を斜面に平行な成分 \(mg\sin\theta\)(斜面下向き)と垂直な成分 \(mg\cos\theta\) に分解する。
\(mg\sin\theta\) は \(x\) 軸の負の向きなので − をつける。
(2)速度 \(v\)
(1) の加速度 \(a = -g\sin\theta\) は時間によらず一定。これを \(t\) で積分すると速度になる(\(g\),\(\theta\) は定数なので,\(t\) だけを積分する)。
積分定数は初速度から決める。\(t = 0\) で \(v = v_0\)(\(v(0) = v_0\))なので,代入して \(C_1 = v_0\)。 よって \(v = v_0 - gt\sin\theta\)
(3)\(x\) 座標
(2) の速度をさらに \(t\) で積分すると位置(\(x\) 座標)になる。\(v_0\) の項は \(v_0t\),\(t\) の項は \(\dfrac{1}{2}t^2\) になる。
原点Oから打ち出したので \(t = 0\) で \(x = 0\)(\(x(0) = 0\))。よって \(C_2 = 0\),\(x = v_0 t - \dfrac{1}{2}gt^2\sin\theta\)
(4)折り返す時刻 \(T\)
折り返し点では速度が 0 になる。(2) の式で \(v = 0\) とおくと
(5)折り返し点の \(x\) 座標
(3) の式に (4) の \(T\) を代入する。
(6)原点に戻る時刻 \(T'\)
原点に戻るのは,位置が再び \(x = 0\) になるとき。(3) の式に \(x = 0\),\(t = T'\) を代入する。
\(T' \neq 0\) より \(T' = \dfrac{2v_0}{g\sin\theta}\)
確かめ \(T' = 2T\)。上りにかかる時間と下りにかかる時間は等しい(なめらかな斜面では運動が対称になる)。
練習問題①
質量 \(m\) の物体Aが面から受ける垂直抗力と加速度の大きさを求めよ。ただし,重力加速度の大きさを \(g\) とし,あらい面と物体Aとの動摩擦係数を \(\mu'\) とする。また,物体Aが移動する向きは で示した。
(1) 力 \(F\) で鉛直に引き上げる。
解説
物体は面から離れて持ち上がるので,面から受ける力はない(垂直抗力は 0)。はたらく力は \(F\)(上向き)と \(mg\)(下向き)だけ。加速する向き(上向き)を \(y\) 軸の正にとる。
(2) 角度が \(\theta\) のあらい斜面上を滑り落ちる。
解説
加速する向き(斜面下向き)を \(x\) 軸,斜面に垂直な向きを \(y\) 軸にとる。重力を \(mg\sin\theta\)(斜面下向き)と \(mg\cos\theta\)(斜面に垂直)に分解する。動摩擦力 \(\mu' N\) は動く向きと逆の斜面上向き。
\(N = mg\cos\theta\) を代入して両辺を \(m\) で割ると
(3) 角度が \(\theta\) のなめらかな斜面上を力 \(F\) で引き上げる。
解説
加速する向き(斜面上向き)を \(x\) 軸にとる。重力の斜面方向の成分 \(mg\sin\theta\) は斜面下向き(\(x\) の負の向き)。
練習問題②
時刻 \(t = 0\)〔s〕のときに,地面から小球を 19.6 m/s で鉛直上向きに投射した。鉛直上向きに \(y\) 軸をとり,地面の \(y\) 座標を 0 とし,重力加速度の大きさを 9.8 m/s² とする。
- 時刻 \(t\)〔s〕における小球の速度 \(v\)〔m/s〕を \(t\) を用いて表せ。
- 時刻 \(t\)〔s〕における小球の \(y\) 座標〔m〕を \(t\) を用いて表せ。
- 時刻 \(t\)〔s〕と小球の速度 \(v\) の関係をグラフで示せ。
- 時刻 \(t\)〔s〕と小球の \(y\) 座標の関係をグラフで示せ。
- 投射してから 1.0 s 後の小球の速度はいくらか。
- 地面からの高さが 14.7 m の地点を小球が通過する時刻を答えよ。
解説
まず加速度を求める
はたらく力は重力 \(mg\)(下向き)だけ。\(y\) 軸は上向きが正なので
(1)速度
上で求めた加速度 \(a = -9.8\)(一定)を時間 \(t\) で積分すると,速度 \(v\) が求まる。
積分定数 \(C_1\) は初速度から決める。\(t = 0\) で上向きに 19.6 m/s で投げたので \(v(0) = 19.6\)。代入すると \(19.6 = -9.8\times 0 + C_1\) より \(C_1 = 19.6\)。 よって \(v = -9.8t + 19.6\)
(2)\(y\) 座標
(1) の速度 \(v = -9.8t + 19.6\) をさらに \(t\) で積分すると,位置(\(y\) 座標)が求まる。\(-9.8t\) は \(-\dfrac{9.8}{2}t^2 = -4.9t^2\),\(19.6\) は \(19.6t\) になる。
積分定数 \(C_2\) は投げた位置から決める。地面(\(y = 0\))から投げたので \(y(0) = 0\)。よって \(C_2 = 0\),\(y = -4.9t^2 + 19.6t\)
(4) のグラフをかくために,平方完成して頂点を求めておく。
→ \(t = 2\) s で最高点 19.6 m に達する。
(3)(4)グラフ
(1) の式(傾き −9.8 の直線)と (2) の式(上に凸の放物線)をグラフにする。\(t = 2\) s で \(v = 0\)(最高点),\(t = 4\) s で \(y = 0\)(地面に戻る)。
(5)1.0 s 後の速度
(1) の式に \(t = 1.0\) を代入:\(v = -9.8 \times 1.0 + 19.6 = 9.8\) → 正なので鉛直上向きに 9.8 m/s。
(6)14.7 m を通過する時刻
(2) の式で \(y = 14.7\) のとき:
両辺を 4.9 で割ると \(3 = -t^2 + 4t\),すなわち
\(t = 1.0\) s(上がっていくとき)と \(t = 3.0\) s(落ちてくるとき)の2回通過する。
練習問題③
角度 30° のあらい斜面上向きに \(x\) 軸とする。図のように,時刻 \(t = 0\) のときに,原点Oから \(x\) 軸の正の向きに初速度 \(v_0\) で質量 \(m\) の物体を打ち出したところ,斜面を上り,折り返した。重力加速度の大きさを \(g\) とし,物体と斜面との動摩擦係数を \(\mu'\) とする。
- 物体が斜面を上っている間の加速度 \(a\) を答えよ。
- 物体が斜面を上っている間の時刻 \(t\) における速度 \(v\) を \(v_0\),\(g\),\(t\),\(\mu'\) を用いて表せ。
- 物体が斜面の折り返し点での \(x\) 座標を \(v_0\),\(g\),\(\mu'\) を用いて表せ。
- 物体が斜面を下っている間の加速度 \(a'\) を \(g\),\(\mu'\) を用いて表せ。
解説
\(\sin 30^\circ = \dfrac{1}{2}\),\(\cos 30^\circ = \dfrac{\sqrt{3}}{2}\) なので,重力の斜面方向の成分は \(\dfrac{1}{2}mg\),斜面に垂直な成分は \(\dfrac{\sqrt{3}}{2}mg\)。動摩擦力の向きは「動く向きと逆」なので,上りと下りで向きが変わることに注意。
(1)上りの加速度 \(a\)
上っているとき,動摩擦力 \(\mu' N\) は斜面下向き。
\(x\) の式の \(N\) に,\(y\) の式から求めた \(N = \dfrac{\sqrt{3}}{2}mg\) を代入し,両辺を \(m\) で割る。
(2)上りの速度 \(v\)
(1) の加速度は時間によらず一定なので,そのまま \(t\) で積分すると速度になる。
初速度は \(v_0\) なので \(v(0) = v_0\) より \(C_1 = v_0\)。 よって \(v = v_0 - \dfrac{1+\sqrt{3}\mu'}{2}\,gt\)
(3)折り返し点の \(x\) 座標
まず折り返す時刻 \(T\) を求める。折り返し点では \(v = 0\) なので
次に,折り返し点の位置を求めるために位置の式をつくる。上っている間(\(0 \le t \le T\))の速度 (2) を \(t\) で積分する。
原点から打ち出したので \(x(0) = 0\),よって \(C_2 = 0\)。
折り返すのは \(t = T\) のときなので,この式に \(t = T\) を代入する。
(4)下りの加速度 \(a'\)
下っているとき,動摩擦力 \(\mu' N\) は斜面上向き(\(x\) の正の向き)に変わる。\(N\) は上りと同じ。
\(y\) の式から求めた \(N = \dfrac{\sqrt{3}}{2}mg\)(上りと同じ)を代入し,両辺を \(m\) で割る。
ポイント \(a'\) が負 = 斜面下向きに加速する。上りの加速度の大きさ \(\dfrac{1+\sqrt{3}\mu'}{2}g\) より,下りの加速度の大きさ \(\dfrac{1-\sqrt{3}\mu'}{2}g\) のほうが小さい(摩擦が運動を妨げる向きに変わるため)。
練習問題④
図のように,水平面に沿うように \(x\) 軸,鉛直方向に \(y\) 軸をとり,時刻 \(t = 0\) のときに原点Oから仰角 \(\theta\),初速度 \(v_0\) で物体を投射した。重力加速度の大きさを \(g\) とする。
- 時刻 \(t\) における物体の速度の水平成分を \(v_x(t)\),鉛直成分を \(v_y(t)\) とすると,時刻 \(t = 0\) における \(v_x(0)\),\(v_y(0)\) をそれぞれ答えよ。
- \(v_x(t)\),\(v_y(t)\) をそれぞれ答えよ。
- 時刻 \(t\) における物体の \(x\) 座標 \(x(t)\),および \(y\) 座標 \(y(t)\) をそれぞれ答えよ。
- 物体を投射してから最高点の \(y\) 座標を答えよ。
- 物体を投射した位置から,水平面に達した位置までの水平距離を答えよ。
解説
はたらく力は重力 \(mg\)(鉛直下向き)だけ。水平方向には力がはたらかない。運動方程式を軸わけすると
(1)初速度の分解
\(v_x(0) = v_0\cos\theta\), \(v_y(0) = v_0\sin\theta\)
(2)速度
\(x\) 方向,\(y\) 方向それぞれで,加速度を \(t\) で積分すると速度になる。\(a_x = 0\) を積分すると定数だけが残る。
積分定数は (1) の初速度から決める。\(v_x(0) = v_0\cos\theta\) より \(v_x(t) = v_0\cos\theta\)(水平方向は等速)
\(y\) 方向は \(a_y = -g\)(一定)を積分する。
\(v_y(0) = v_0\sin\theta\) より \(v_y(t) = -gt + v_0\sin\theta\)
(3)位置
(2) の速度をそれぞれ \(t\) で積分すると位置になる。
原点Oから投げたので \(x(0) = 0\),\(y(0) = 0\)。よって \(C_3 = C_4 = 0\) となり
(4)最高点の \(y\) 座標
最高点では,上向きの速度がちょうど 0 になって上昇から下降に変わる。つまり \(v_y(t) = 0\) なので \(t_1 = \dfrac{v_0\sin\theta}{g}\)。これを \(y(t)\) に代入する。
(5)水平到達距離
水平面に達するのは,高さが再び 0 になるとき(\(y(t) = 0\))。そのときの時刻を求めてから,\(x(t)\) に代入して水平距離を出す。
\(y(t) = 0\) のとき:\(t\left(v_0\sin\theta - \dfrac{1}{2}gt\right) = 0\),\(t \neq 0\) より \(t_2 = \dfrac{2v_0\sin\theta}{g}\)。これを \(x(t)\) に代入する。
ポイント \(\sin 2\theta\) が最大(=1)になる \(\theta = 45^\circ\) のとき,最も遠くまで届く。また \(t_2 = 2t_1\)(最高点までの時間の2倍で地面に戻る)。